特別インタビュー:青木海(情報メディア創成学類卒業生・未踏スパクリ)

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情報メディア創成学類卒業生の青木海さん(2012年度入学)にお話を伺いました。青木さんは、2015年度に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の未踏IT人材発掘・育成事業(以下未踏)に採択、スーパークリエータにも認定されました。

 

未踏に採択されたプロジェクトはどのようなものでしょうか?

僕と尾崎さんという情報メディア創成学類(以下創成)出身のひとつ上の先輩とやった、「sigboost」というプロジェクトです。Maxというビジュアルプログラミング言語で記述したエフェクター・シンセサイザーなどのソフトウェア楽器を、実機のハードウェア上にハードウェアとして実装できるようにするプロジェクトです。

未踏事業成果報告会の様子

ソフトウェア楽器の問題点は?

ソフトウェアで実現した楽器をパソコンの上で動かした時、安定性や応答性の問題があります。他のタスクの割り込みを受ける、そもそも処理する量が多いなどの理由で処理落ちしてしまうのです。音の出力が遅延してしまうと演奏に支障が出てしまいます。

また、出力が不安定だとライブ中に音が止まってしまったり、飛んでしまったりということが起こります。音をソフトウェアでシミュレーションして作ることが出来ても、実際のライブで使うにはそのような課題があります。それを解決するために、ハードウェアとして簡単に実装するためのシステムを開発しました。

 

ハードウェアにするとなぜ解決出来るのでしょうか?

ソフトウェアで動くもの…創成の1年生だったらC言語を今は書いていると思います。ハードウェア処理では、C言語で書くようなシーケンシャルな処理*ではなくて、全ての演算を同時並列的に起こせるよう回路に実装します。高速化出来るし、その特定の処理のためだけに設計している回路だから安定しているのです。

関連記事 特別インタビュー:青木海 ハードウェア実装の難しさ
 http://magazine.mast.tsukuba.ac.jp/archives/1996

 

創成の授業でsigboostに関わりのあるものはありますか?

創成の授業で一番役に立ったものは組み込み技術キャンパスOJT(以下、COJT)だと思います。学類3年生の時に、COJTのハードウェアコースを受講してシンセサイザーを作りました。

COJT成果報告会の様子

もともと僕はシンセサイザーを作るのが好きで、Maxでシンセサイザーを作ったことがこともあれば、VSTという規格のC++で書いて動くようなソフトウェアのシンセサイザーやエフェクターを作ったこともあります。

その時、とても苦労していました。処理は書けるのですが、実行が遅くなってしまうのです。実行が遅いと音飛びしてしまいます。音飛びしないように作らなければならないので、シンセサイザーを作っているのか高速化をしているのかわからなくなってしまったんです。

あと、ソフトウェアで作ったシンセサイザーって少なからず不定なレイテンシが乗ってしまいます。「なんかこれ弾きづらい」という感覚があって、自分で作った楽器があるのにそれを弾いてもなんだか気持ちよくない、しっくりこないというのが嫌でした。

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それで、3年生のときにCOJTでシンセサイザーを作ったらとにかく速い、速いんですよ。FPGAで作ったシンセサイザーは、気持よかったんです。やっぱりレイテンシが重要なんだな、とその時思いました。

COJTが始まった時、僕は全く何もわかっていませんでした。回路のことを知らない、マイコンをいじったこともない、ハンダ付けもしたこともありませんでした。それゆえに、講師の先生をとても困らせてしまうこともありました。しかし、COJTはみっちりと実習をやってくれるので、きちんと時間を割けばわかるようになります。優秀な講師の先生が教えてくださるので、とても良い環境で、おすすめです。

 

COJT以外の授業はどうでしょうか?

直接役に立ったものはあまりないかもしれません。授業はきっかけだと思っています。

自分で調べる癖がついている人は、既に授業の50%くらいは知ってるじゃないですか。特に1年生の講義内容では、自分で調べている人だと大体知っていることなんです。でも半分くらいは知らないことがあって、何を知らないかということは自分ではよくわからない。授業は知らないものを探す場所だと思っていて、その検索ワードを教えてくれる場所だと思っています。知らない単語が出てきた時にすぐに調べておくと、直接は自分の知識として役に立たなくてもそこから繋がっていったものが将来役に立つことがあります。

 

授業ではありませんが、いろいろな分野が得意な人との繋がりを持てるのが創成の良いところだと思います。良い具合にwebが得意な人、コード書くのが速い人、ハードウェアをやっている人などが居ますよね。sigboostのウェブサイトの作成や実機の外装デザインは、そういった先輩や友達に手伝ってもらいました。それが実現できたのは大学・創成での縦の繋がりがあったからかな、と思います。

 

sigboostの今後について教えてください

現在も引き続き開発を続けています。未踏の成果発表会の後、実際に使ってみたいということで、芸大の方・メディアアーティストの方数人から連絡をいただきました。その方々と少しずつ話しながら開発を進めています。

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sigboostの実機。デザインは創成学類の知人に協力してもらったとのこと。

 

後輩へのアドバイスはありますか?

アドバイス出来るようなことはあまりありませんが、自分で調べて自分で考えましょうということくらいですかね。

僕自身も結構反省しているのですが、ネットの文字を読んだだけで意外と自分で考えた気になってしまいませんか。TwitterとかWebページとか色々有益な資料はたくさんあるのでそこで勉強するのは良いですが、価値を見出そうとした時には、やっぱり自分の頭で考えないとダメなのかなと思います。

 

もし、今1年生の方が居たら、自分の専門のようなものを見つけると良いのではないでしょうか。

「これは俺しか知らない」とか、「この考えは俺しか持っていない」みたいなものです。それを自分が出来るとは限らないので、例えば「こういうアイデアあるけど、出来るかどうかはわからない」というものがあったら、4 年間でそれを出来るように勉強すれば良いと思います。そうすると、「これは俺しか考えつかないし、俺しか作れねぇ」みたいなものが出来るかもしれません。

sigboost は多分、上手いことハマった例だったのかなと思います。僕が音楽をやっていて、ただシンセサイザーを弾けるだけでは何も価値にはならないのですが、そこでハ ードウェア実装が出来たから、sigboost になったのではないかと思います。

 

みなさんの「自分が好きな事」が上手く実装技術と組み合わさると、活きてくることがあるのではないかと思います。

 

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